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(平成12年6月5日)
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提案権騒ぎの株主オンブズマンは 市民運動に名を借りた総会屋的行為
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マンスリー G O L D
平成12年6月号 「私の主張」より転載
去る三月十二日付朝日新聞(大阪一三版)の社会面トップで、大阪の市民団体「株主オンブズマン」(代表=森岡孝二・関西大学教授)が、住友銀行の株主五十数名から三〇万株余の委任状を集め、商法の「株主提案権」の規定に基づき、六月の住友銀行株主総会で同行の取締役、監査役の報酬、ボーナス、退職慰労金の額を個別に公表することを義務付ける定款変更案を提出すると報じている。
それによると、住友銀行には六〇〇〇億円の公的資金が導入されており、「不良債権の発生と処理の遅れに経営責任があるはずの取締役が、高額の報酬や退職慰労金を受け取ることは、社会常識からみてとうてい納得できない」という手紙を株主に送り、株主提案権行使に必要な三〇万株余を集めたという。
これまでにも電力会社で市民グループが原子力発電所の運転制限などを求める株主提案を行った例があるが、一般企業では珍しく、都銀界でも前例はないという。 また、役員個々の報酬などについて額を公表している都銀もない。 収入の額については個人のプライバシーにかかわることだからである。
あえて、公開を求める真意はなにか。 公的資金を導入して金融不安の解消を図った経緯については、すでに周知のとおりである。 たしかに、庶民的な感情としては長期にわたる低金利の一方、自分の預金の引出しにも手数料を払わねばならず、銀行に対する“怨念”はないとはいえない。
だが、いまや金融界にもコーポレート・ガバナンス(企業統治)の体制が確立しつつあり、住友銀行も合併合意に先立って、執行役員制度を導入し、取締役会の人数も三八人から一七人に減らすと同時に社外取締役を二人から三人にした。 経営執行に携わる社内役員ばかりの取締役会では、人事権を握る社長の言うことに反論する取締役はいない。 米国の企業のほとんどでは取締役会は、執行役員の長としてのCEO(首席執行役員)ら、社内取締役と多数の社外取締役からなるが、総数はせいぜい一〇人程度。 日本の大企業のように三〇人、四〇人も取締役がいては、まともに議論もできないというわけだ。
こうした流れに影響されて日本でもソニーや三和銀行など取締役会の下部組織としての報酬委員会(取締役と執行役員の報酬を決める)、指名委員会(取締役と執行役員を指名する)を導入する企業も出始めている。 これまで、社長に一任されていた報酬決定や指名を委員会でチェックすることで、透明性、公正さを確保するのが狙いである。 有力経済誌によるコーポレート・ガバナンスベスト一〇〇社の中で住友銀行は第四位にランクされている。
さて、株主オンブズマンのいう高額の報酬というのは、銀行員の収入の高さ(マスコミで騒がれる程ではないのだが…)からの連想だろうが、これについても、ある経済誌が特集を組んでいる。 一般的に日本企業の社長の報酬は固定報酬が主体で、業績賞与はさほど多くは出ていないだろうと考えられる…というのだ。 また、住友銀行が一年間に生み出した「株主利益」を配当金と株価から算出し社長の報酬と実際報酬との差は大きく、高額どころかきわめて低いというデータが出ているのだ。
株主オンブズマンが、役員報酬の公表を求める提案権の行使表明は、自らの存在を株主総会の場で誇示しようというパフォーマンスに朝日新聞が乗ったとみるのはひが目か。 マスコミと組んで、株主代表訴訟や株主提案の乱用する売名行為であり、彼等のいう株主総会の活性化などとは程遠いものといわざるを得ない。
今年も六月二十九日に株主総会が集中的に開催される。 大阪府警では「株主総会対策本部」を設置、警戒を強めるという。 府警によると、「大阪府内の総会屋は昨年末で約一〇〇人となり、前年比に比べて約五〇人の減。 総会やグループの数も九団体から六団体に減ったが、これは利益供与要求罪が新設された一九九七年の改正商法施行などで、摘発を恐れて活動を停止したものとみられる」としている。
この結果、昨年一年間に株主総会への出席が確認された総会屋は延べ二八人で前年より一二人減、六月二十九日の集中日に出席したのは七人。 これに対して、警備の要請?があった三三七社に約二〇〇〇人の警察官を派遣し警戒に当たったのだ。
また、警察庁によると、全国で活動している総会屋は昨年末現在、約四〇〇人で前年度に比べて約二〇〇人減ったとしているが、かりにこれだけの人数が全員出席したとしても、六月二十九日には約二〇〇〇社が一斉に開催するため、五社当たり一名の計算になる。 この四〇〇人という数字は多分に水増しされたものであることは、昨年一年間で発言した総会屋は三〇人程度だったとされていることからでわかる。
民間企業の株主総会の警備になぜ、警官が必要なのか。 一部には警察が企業に対し、警官派遣の要請をするよう暗に求めているという声も聞かれるのだが…。 企業の姿勢も問題だが、このような実状に目を向けず、株主総会の公開を唱えたり、株主オンブズマンの提案権の行使を大々的に報じるマスコミの姿勢も、提案権の乱用を助長し、株主総会の活性化を妨げる要因になっているのではないだろうか。 私の主張に反論があれば、しかるべき公の場で議論する用意もある。
(注)株主総会とは、株主による株主の株主総会である。 これは株主総会の本質だ。 ところが、最近のマスコミ論調は株主総会の公開やモニター放映を宣伝するなど本質からはずれてしまっている。 さらに、今回のような市民運動家たちによる個人のプライバシーを侵害する提案権の乱用を助長するような報道姿勢はいかがなるものか。 一方で、会場警備に名を借りた国家権力の介入に批判の声を強めないのはなぜか。
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