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あ と が き

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 サラリーマンのいちOBに過ぎず、「もの書き」には全く縁がなかった素人の私が、本稿を執筆するに至った動機というか、経緯についてはプロローグで既に述べた通りである。

 執筆の準備のために、初回からの公判傍聴メモ(自分の書いたメモではあるが、乱筆のため判読に苦しむ場面もあった)の整理、事件を報道した日刊紙、週刊誌、月刊誌等のスクラップの分析等からはじまり、事件の軌跡を整理しながら時系列的に並べる等の作業を、平成五年八月初めから始めた。

 幸い平成五年の夏季は冷夏で準備並びに執筆活動は大いにピッチがあがったし、書斎の窓から吹き込む風も心地よかったのだが、平成六年の七月・八月は大阪でも体温を上まわる猛暑と熱帯夜が続き、人間の思考力、耐久力というものは外気が体温を超えると大きく鈍り、阻害されることを身をもって体験した。

 ペンを採りながら急に睡魔におそわれたり、同じことを繰り返えし書いてみたり、最終の追い込みや、校正が大きくペース・ダウンした。資料の整理に手をつけてから早や満一年半が経ってしまった。

 作家の故松本清張は、油の乗り切った全盛期には月に一千枚を書きあげていたという。プロとアマの違いというか素質が全然異るのか、全くの驚きである。

 本稿の全体の構成のまずさ、表現の重複、稚拙な筆の運び等が各所にあり、読みづらかった点も多多あったことと思うが、「素人」という見地からご寛容いただきたいと思う。この点を補うという意味ではないが、大阪中之島図書館、大阪証券取引所(有価証券報告書閲覧部門)や北浜の証券情報センターへ再三足を運び、時には天眼鏡を使いながら、巻末に資料を整備し添付したので参考にしていただければ幸いに思っている。

 イトマンの住金物産への合併発表、新会社の発足以来相当の時間が経過した平成六年の元旦、あるOBの八十五才の長老から年賀状をもらったのだが、いまだに頭の中にイトマン消滅のことがこびりついて離れないのであろう、感動的な添え書があったので、これを紹介して、あとがきのしめくくりとさせていただきたい。

 「イトマン百十年の歴史が消え、まさに世紀の痛恨事です。われらの生涯の大半はイトマンとともに生きその恩恵に浴してきました。この上はしかと胸に抱きわが人生の伴侶とします」

 明治人らしく毛筆による達筆な墨痕鮮やかな筆跡だった。

 最後に、本稿の執筆にあたりイトマンOBの数多くの方方に真摯なご協力を賜った。ここで個個のご芳名を掲載することは遠慮させていただきたいが、心から厚くお礼申しあげたい。

 また文中の法廷風景のスケッチは、傍聴していたOBのJoe氏にご無理をお願いしたのだが、快諾いただきプロ並みのできばえで、これまた厚くお礼を申し述べたい。

 さらに本稿の印刷についてはOBの田畑豊氏に格別のご協力をいただいた。ご親切な配慮に対し衷心より謝辞を申し述べたい。

 本稿は、不運にも抹殺されたイトマン百十年の歴史に対するエレジーであり、レクイエムでもある。また、プロローグでも述べた熱烈なイトマンファンだった亡きオヤジの墓前にささげたいと思う。

 一年半もの長期にわたった本稿を脱稿して、ホーッとして腑抜け人間になるのではないかと心配している。おこがましいが私の第二の人生のモットーとして「生涯青春」「生涯学習」を掲げている。学生時代から全く遠ざかっている夏目漱石の作品を読みかえし、漱石文学の世界に浸りたいと思っている。

 すでに書斎の本棚には、平成五年暮から新編集により岩波書店から順次刊行されている昔なつかしい装丁の漱石全集が十三巻人待ち顔に並んでいる。全部で二十九巻の予定である。

 本買へば 表紙が匂ふ 雪の暮

            大 野 林 火


  平成七年三月 春分の日

                野 木 昭 一

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著書の略歴

1927年  大阪市生まれ
1948年  関西学院大学高等商業学部(旧制)卒業
1951年  神戸経済大学(旧制)卒業(現神戸大学)
 同年  伊藤萬株式会社へ入社
1977年  同社取締役就任
1981年    同  退任
1981年  同社提携企業の幹部を経て
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1990年  現役引退


    住友銀行により

  百十年ののれん≠ヘ

        かくして引き裂かれた (非売品) 

  平 成 七 年 五 月 十 五 日 発行   

      著 者    野  木  昭  一



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第七章 (3) 第八章 第九章 (1) 第九章 (6) 第十章 第十一章 (1) 第十一章 (3)
第十二章 第十三章 第十四章 第十五章 第十六章 第十七章 (1) 第十七章 (4)
   目 次 プロローグ    エピローグ あとがき 巻末 参考資料