(平成15年3月18日)

東 京 コ レ ス ポ ン デ ン ス


* お花見シーズンがやって来る

   先進国の中で、日本は酔っ払い天国 守ってほしいマナーと節度


 お花見の季節が近ずいた。 桜前線の北上が気になる。 毎年、気象庁が開花予想日を発表する。 気象観測を主な仕事にしているお役所にしては、粋なハカライである。 花の咲く日にちを予測して公表するなど、おそらく世界でもまれな、日本だけのサービスだろう。

今年2回目の開花予想によると、基準となる「ソメイヨシノ」の開花日は、平年より「1日遅く、5日早い」という。 これは、地域差によるものである。 先に行なわれた第一回目の発表よりも、平均2〜3日遅れることになる、と今回の予測で改められた。 その理由は、3月の中旬から下旬にかけての気温が、比較的低めに推移するだろうとの予測に基ずくものである。

開花予想日は、西から福岡、宮崎、高知が3月25日、大阪は27日、名古屋は24日、東京都心が25日となっている。 寒かった冬からようやく抜け出して、やってきた春を迎える喜びで、日本の各地では、サクラの咲くところ、お花見の宴がたけなわとなる。

東京では上野公園を初め、皇居周辺、千鳥ヶ淵、靖国神社、井の頭公園などが、花見客で賑わう。 上野公園には毎年170万人が押し寄せる。 そこで、どういうことが起きるのか。 企業の新入生は原則として4月1日に入社する。  彼らに最初に与えられる任務は、先輩達のための花見の座席取りだと言う。

新人が確保した桜の木の下で、青いビニール・シートの上に車座になり、花の宴が繰り広げられる。 中にはコンロを持ち出してバーベキューをやり始めるグループもいる。 挙げ句の果ては、発電機まで持ち込んでのカラオケ大会が深夜まで続く。 当然のことながら、ツワモノどもの宴の後はゴミの山である。

酒が入ると人が変わる。 迷惑行為、言い争い、喧嘩などが頻発する。 いくら年に一度の春が来たから、花見で浮かれているんだといっても、ハメを外した言動は、許されるものではない。 公園を管理する都側では、火気の使用や朝からのスペースの占有確保すること、それにカラオケなどの騒音を禁止するルールを決めた。 ゴミ処理の徹底など最低の作法を守ることが、求められている。


アメリカ系のB記者は言う。
日本に来て五年近くなります。 夏、秋、冬、春の季節感がはっきりとしていることに、とても興味を覚えます。 この国に住んで、初めて四季の移り変りを実感することが出来ました。

ですから、自然のうつろいを愛でる日本の人たちの心と、伝統的な文化には“ワビとかサビ”に共通するものがあるような気がします。 “ワビとかサビ”はよく解かりませんが、そうした異文化に敬意と底深い神秘性を感じると同時に、高く評価をしています。 野山に自然の変化を求めて出かける、日本の習慣は他の国では余り見ることの出来ない“風物詩”です。

秋には木々の葉っぱは紅葉して、枯れ散ります。 欧米では、一般的にはそれは自然の営みとして当然のことだと、とらえるだけです。 それを紅葉狩りと称して、わざわざ枯れた葉っぱを眺めるために、遠くまで出かけるのは、とても不思議に思うのも、やはり文化的な感覚の相違なのでしょうか。

冬が過ぎて、やっと春が来た、という気持ちは確かによく解かります。 殊のほか四季を感じ、季節の心を大切にする日本の人たちですから、こうした春の花見の時ばかりは、また楽しさも格別なのでしょう。 さらに、別の要素として考えられることがあります。 アメリカでは、政府や多くの企業などは、7月を年度の初めとしていますが、日本の行政を初め、殆どの社会生活全般が毎年4月を起点に始まっています。

そうしたことからも、春の季節は年度の変わり目ということで、とりわけ新しい気持ちも手伝って、華やぐのかも知れません。 しかし、ほかの季節には見られない行儀の悪さが目立つのも、このお花見です。 真っ昼間から酒を呑んで、傍若無人のどんちゃん騒ぎです。 マナーが悪いのです。

どういう訳かよくわかりませんが、日本の社会は酒に寛容です。 酒の上のことだから、といって免罪符になる場合があるようですが、とんでもないことだと思います。 それが、花見のシーズンになると、一段と許容されるような気がします。 公共の場所を占有して、騒音を出し、酒に酔っ払ってわめき散らすなど、およそ花を愛でる人たちの行為とは思えません。

もっと静かに春の訪れを喜び、楽しむ方法がある筈です。 首都ワシントンの、日本から贈られたポトマック河畔の桜は有名です。 美しいこの桜並木に浮かれて、もし、そこでポケットからビールかウイスキーを取り出して飲めば、それは犯罪として取り締まられます。 ましてや、ビニールシートを広げて、宴会でも始めようものならば、たちまち警官が飛んできて逮捕されるでしょう  


 
* なぜ増えない外国人観光客

   足りないのは、思いやりと知恵


 日本への外国人観光客をもっと積極的に誘致しようと、政府はこのほど有識者による「観光立国懇談会」を設けた。 これは、デフレからの脱出対策の一環とも考えられている。 遅すぎた感は免れないが、今年を「外国人観光訪日元年」としようという試みだ。

外国からの観光客数の目標を2010年までに、現状の倍以上の一千万人としている。 国土交通省の「平成13年度版(2001年度)観光白書」によれば、この年、日本を訪れた外国人旅行者は477万2千人だった。 逆に、日本から海外旅行に出かけた人は、1,621万6千人と受け入れた数の三倍以上に達している。 皮肉な数字である。

一方、アジアの他の国や地域はどうかというと、外国からの観光客の数はそれぞれ韓国が515万人、香港が1,373万人、さらに中国は3,317万人と、桁違いの数字を見せている。 どうして日本の「観光産業」が振るわないのか、今後この懇談会が検討結果を出してくるであろうと思われる。 二、三人の在日外国人に意見を聴いてみた。


ヨーロッパ系のE記者は言う。
日本にはヨーロッパと同様に、観光資源が沢山あります。 京都や奈良など、極めて保守的な日本古来の伝統と文化を持つ都があります。 そこには、神秘性に富んだ何千年の歴史を守っている建造物をはじめ、独特のしきたりや、異文化の人間の社会生活があります。

それだけではありません。 年中、日本のどこかで催されている、いろんな祭りや行事も、重要な観光資源となります。 そうしたエキゾチック(異国情緒)豊かな観光資源にも恵まれながら、それらを効果的に外国に伝えていないことも、外国からの観光客の増加に結びついていないのではないでしょうか。

観光は一つの重要な産業として考えることです。 観光客の動きに従って、物と人とお金と情報が流通します。 空港を始め、交通機関や宿泊施設等の充実整備、出入国の管理、治安の維持、言語サービスなど、国内の観光案内の受け入れ体制等を、総合的に立案、推進するレスポンシビリティー(責任と義務)を持つファンクション(機能・部門)を明確にして、早急に推進するべきです。

現在、どこの誰が統合的に管轄しているのですか。 総理府ですか、外務省ですか、文部科学省ですか、それとも経済産業省ですか、もしくは国土交通省ですか。

もう一つ、伝統的なオリエンタル(東洋的な)文化を外国に紹介するのはいいのですが、今もなお、日本も韓国も中国、そしてベトナムに区別もなく、ごっちゃまぜ文化の、頬骨が高くて、目の吊り上がった奇妙な顔立ちの東洋人がヨーロッパの国の教科書に描かれているのも事実です。

羽織袴の和服姿や、提灯を手に下駄を履いたこどもがえがかれていたり、極端なのはチョン髷頭のサムライ、そしてフジヤマ・芸者の神話が、一部に現代の情報として生きているのも事実です。 日本にやってきて、その近代化している社会に驚いた、というのも、事実です。 一体、これはどういうことでしょうか。

『観光を司る政府機関』は、そうした誤解を払拭すると同時に、日本の近代社会をもっと戦略的に広報活動するべきでしょう。 技術の象徴として世界に誇る新幹線なども魅力のある観光資源の一つです。 それに整備された都市基盤、レストランでタダで出てくる、飲める水道の水や、無料の公衆トイレの水洗は、上下水道の完備を知らしめます。

都心部の超高層建築群、さらに、やや過密、過剰気味ではありますが、高速道路網の充実と自動車の氾濫なども、見方を変えれば、奇異な状景に映るかも解かりません  

ヨーロッパ系のF記者はこう言う
外国からの旅行者が日本を敬遠するのは、なんと言っても、物価の高さです。 デフレだというのに、全ての物の値段が想像以上に高いのです。 それに税金が5%上乗せされますから更に割高感が大きくなるのです。

東京都心のホテルでコーヒーを一杯飲んだら、税金を含めて960円も請求されました。 コーヒー一杯が8ユーロもする国には、誰も観光旅行に出かけて行こうとは思いませんよ。 アジアを訪ねる欧米からの旅行者は、殆どが韓国や中国等日本の近隣諸国も歴訪します。 その際、彼らが直接感じるのが物価の比較です。

ですから、日本訪問を避けるか、若しくは日本での滞在が出来るだけ短い日程のほうが歓迎されるといいます。 これでは、いくら勧誘をしても、何か特別な優遇施策でも講じない限り、外国からの観光客の増加は望めません。 が、考え方をちょっと変えて、工夫をすれば、いくらでも問題解決策は見つかります。

最近は、インターネット等で情報を集めて検討、一流のホテルを避けて安価でしかも清潔な日本旅館を利用する人たちも増えています。 タタミと蒲団で、かえってそのほうが異国情緒が味わえる、と私の友人も満足していました。

外国からの旅行者には近寄り難い安売り店等も、適切に紹介することで喜ばれるでしょう。 そのほか政策的には、消費税の免税や、ヨーロッパ各国の都市で実施されている各種の交通機関の割引乗車券などの優遇措置など、いくつかの施策はすぐにでも実施できるでしょう  

更に別のヨーロッパ系のG記者は言う。
物価だけでなく、言葉やしきたり、慣習の問題も大きいのです。 都会ではかなり英語が通じますが、まだまだ十分とはいえません。 交通機関などで聞きたいことがあっても、近くには係員が誰もいません。 乗車のための案内も極めて不十分です。

外国からだけでなく、一般旅行者のための言語サービスのあるインフォーメーション・センターを、ヨーロッパのように要所に設けるべきです。 ここには係員を置くのが理想的ですが、コンピューターによる自動応答機等を設置する技術は、日本ではいとも簡単なことでしょう。

また、それによって日本の技術水準の高さを強調することも出来ます。 街の中で、よく利用するタクシーは、欧米では通常、自分でドアを開け締めします。 日本では、乗客がドアに近ずいて手をかけようとすると、急に自動的に開いて驚く外国の観光客も少なくありません。 誰も事前に説明しないからです。

交通機関は、一見便利なようですが、乗り換えなどは複雑で、まったく解かり難い迷路そのものです。 東京の地下鉄などは、一応、路線毎に色分けがしてありますが、各路線にはそれぞれの固有名詞が付いています。

この名前は、“エーダンハンゾウモンセン”“エーダンマルノウチセン”“トエイオーエドセン”等、外国人には意味が解からないので、一度聞いただけではなかなか覚えられません。 できれば、マドリードやパリのそれのように、もっと解かりやすい路線番号を付けてもらえれば、観光客にも分かり易くて親切だと思います。

伝統的な古都、京都の神社、仏閣では、入り口で靴を脱いで、草履等に履き替えなければなりません。 ですが、外国人には、慣れていないために、とても面倒な作業でまごつきます。 オーバーシューズ(ビニール等で作られた靴の上に履くカバー)を準備するなど、もっと来訪者の立場になって、積極的な対応を考えなければ、ますます観光客は遠のくでしょう  


トーマス・J・ナーサム