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(平成16年6月18日)
* 内部告発者の保護制度を確立
今後果たしてうまく機能するか
「公益通報者保護法」がこのほど国会で可決、成立した。
これは、企業や官公庁の不正を内部から告発する人を、解雇などの不当な扱いから、
どのようにして、どこまで守るべきか、といういわゆる『“内部告発者”保護法』で
ある。
二年先の2006年の春には施行される見通しだ。
この法律の実施によって、果たして不正の内部告発がもっとやり易くなるのか、そ
れとも難しくなるのか?
法案を提案した内閣府は「この法律によって内部告発を奨励するのではなく、企業
側に(内部告発の)通報窓口を設けさせることで、問題の早期解決を促すのが狙いだ」
といっているのだが。
しかし、企業側に対する罰則規定もない上、告発者が保護されるためには様々な条
件があって、この保護法の成立によって全ての問題がすっきりした、とは言えないの
が実体のようだ。
従って、まだ課題は残されている、と言える。
ここ数年の間に、大小さまざまな事件や不祥事が相次いで起きた。 それらの多くは
内部告発によって発覚したものである。
それらの中の一例を上げてみよう。
2000年には最初のリコール隠し問題が発覚、その後、限りなく今日迄続き、世間を
騒がしている三菱自動車の欠陥車事件、それに雪印グループの乳製品による集団中毒
や牛肉偽装表示事件があった。
2001年には東京女子医大の医療ミス事件。
2002年には三井物産の国後島の発電施設の不正入札問題や、ODAがらみの贈賄疑惑
が起きた。 また、日本ハムの子会社の牛肉偽装申請事件、さらに東京電力の原発トラ
ブル事件も発覚した。
そして2003年の武富士の盗聴事件、ダスキンの肉まん無認可添加物混入事件、大阪
証券取引所の個別株オプションの不正取り引き事件、名鉄のバス無免許運転隠蔽事件
などなど・・。
さらに2004年には、鳥インフルエンザ事件、北海道警察を始めとする各地方の警察
の不正経理・裏金事件へと続く。
こうした事例の告発経験者などからは、「今回のこの法律の実施によって、むしろ、
今後は告発をためらうケースも出てくるのではないか」と危惧する声もある。
かつて不祥事を起こした企業が、事件発生後いち早く、「内部告発」の通報窓口制
度を、社内の総務部などに設けたところもある。
また、場合によっては(経営側の意向を汲んだ)顧問弁護士事務所を告発の窓口に
しているところもある。
しかし、解雇や減給、報復的な人事などの不利益処分を受けた告発者を救済したり、
現状に復帰させる規定などを設けているケースは少ないのが実体でもある。 そうした
救済は、これまでのところ、結局自分自身の責任と努力によって回復するしかない。
告発相手の雇用主や組織の責任者との交渉をするか、最終的には訴訟などによって
慰謝料請求や現状復帰を求めるほかない。
日本では、不正を正そうとする社員や従業員が、内部の告発の窓口制度を利用しよ
うとしても、誰が“告げ口”をしたのか、と逆に『犯人捜し』が行なわれ、匿名でも
ない限り『密告者』や『裏切り者』扱いされるのが恐いという。
そして、組織内部でうやむやにされたり、逆に握りつぶされたりして、かえって告
発者が不利益な扱いを受けたりする例もある。
組織の責任者や雇用主側が従業員などからの告発を真摯に受けとめて、真剣に問題
の解決に当たるならば、それこそ問題はなくなるのだ。 でも、組織の恥部を外部にさ
らけ出すことを嫌って、秘密裏にその場しのぎの処理で誤魔化そうとするケースがあ
る。
その典型的な例は三菱自動車で証明されている。
また一方、雪印食品の取引先だった西宮冷蔵(株)が、雪印食品の牛肉偽装を告発
したまではよかったのだが、その後、国土交通省から『偽装に関与した』として、一
年四ヶ月の営業停止処分を受けて休業に追い込まれた事例もある。
また、不正経理による裏金処理を告発した北海道警察本部の事件でも、告発者は
『告発した内容が、いわば密室の中で行なわれたことに対して、法的に犯罪行為であ
るかどうかを一体誰が判断するのか。 それが最終的に明らかになるまでの間は、結局
自分で自分の身を守らなければならないのが実情だ』と言っている。
そうした実態の中で「勇気ある告発者」は、第三者の外部の市民団体や報道機関、
調査組織などへ告発することで、不正を広く社会に訴えて糾弾し、より高い告発効果
を得ようとする。
しかし、その場合、新しく制定される法律では、いくつかの制約が付けられている
のである。
つまり、組織内で何か不正や疑惑など、不祥事に繋がる虞れのある問題を知り得た
場合、それを第三者である外部の報道機関やその他の調査機関などに通報するには、
次の要件を満たすことが必要だとしている。
すなわち、
1. 内部や行政に通報すれば告発者自身が不利益を受ける虞れがある。
2. 内部で証拠隠滅の虞れがある。
3. 個人の生命や身体に危害が生じ、または発生する急迫した危険がある。
以上の三項目のいずれかに、信ずるに足りる相当の理由がなければならない、とま
ず歯止めを懸けている。
しかしその一方、告発しようとする者に対して、「正当な理由もなく、外部の機関
へ公益通報をしないように組織内部から口止めされた場合」は告発者は保護されるこ
とになる。
さらに、一応は内部通報したにも拘らず、二週間経過後も正当な理由もなく調査に
着手しなかったり、無視された場合は外部に公益通報しても不利益を受けないように
保護される。
つまり、これらの要件が満たされておれば、通報者としての保護が担保されること
になる。
逆に言えば、これらの条件以外は保護の対象にはなり難いと言うことになる。
そしてまた、告発は、明らかに「犯罪か刑事罰に繋がる法律違反」が行なわれてい
るか、まさに行なわれようとしている場合に限る、という条件がついている。
その対象とされる法律は、刑法、食品衛生法、証券取引法、日本農林規格(JAS)
法、大気汚染防止法、廃棄物処理法、個人情報保護法の七法が明示されている。
さらに追加分は今後制令で定められる。
内部告発問題に詳しいというヨーロッパ系のF記者は言う。
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内部告発者に対する保護法はアメリカが1989年に、そしてその10年後の1998年に
はイギリスで『公益公開法』が制定されています。
英国で内部告発者保護の論議が起きたのは、1990年代の前半でした。 相次ぐ列車事
故や海難事故などで多くの人命が失われたり、金融犯罪で経済不安に陥ったりするな
どの反社会現象に触発されたのがきっかけでした。
いっぽう、米国の“保護法”は『職業安全衛生法』など、各個別の法律ごとに告発
者の保護規定を設けています。 そして通報先を主に監督官庁に誘導しようとしていま
す。
もし、告発者を不当に差別するような雇用者がいた場合には、行政が責任を追求す
ることになるわけです。
米国の内部告発者に対する『保護法』は、連邦政府の職員を対象にしたものです。
重大な法律違反や行政上のミス、それに職権の乱用といったことに関して告発した場
合に、告発者が幅広く保護されるものです。
それより古く、米国では1863年に『不正請求禁止法』が制定されていますが、これ
は連邦政府の予算を不正に請求したことを内部告発した場合、不正請求者には三倍の
賠償金を課し、その告発者には保護だけでなく、政府が回収した金額の15〜30%が報
奨金として支払われる、と言うユニークな制度です。
今度の日本の『公益通報者保護法』は、イギリスの『公益公開法』を参考にしてい
るようです。
その英国の“公益法”は、政府・官公庁を始め、企業、病院、環境汚染など、ほと
んどの告発案件をカバーしているのが特徴です。
多くの企業の従業員は、雇用契約時に機密保持規定などを経営者側との誓約を交わ
しますが、告発内容が、純粋でかつ合理的な告発であれば、それにも拘束されないで
保護されるのです。
組織内に通報システムがある場合には、それを優先させることが前提になっていま
すが、告発を無視したり、放置された場合には、外部の第三者機関に告発しても保護
の対象になります。
英国では当初、こうした内部告発者の保護を制度化することは、雪崩のように告発
が激増するのではないか、と言う危惧が一部にありましたが、実際にはそうはなりま
せんでした。
内部告発は、決して個人的な恨みや競争心、妬みなどによる『密告』であってはな
りません。 企業や組織体が自浄化するための警告でなければならないのです。
企業の法律違反や反社会的な行為を是正させ、組織の責任者自らが意識改革して、
社会的な責任を果たすように役立てるための警鐘ととらえるべきものです。
『終身雇用による一家主義』の日本企業も少し変化が見られるようになってきてい
ます。 企業へのロイヤリティー(忠誠心)は大事なコンセプト(慨念)ですが、全て
に服従することではありません。
ようやく日本でも社会の公益に対する文化意識が変わり始めて来ているように感じ
られます
」
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トーマス・J・ナーサム
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