(平成17年2月4日)

東 京 コ レ ス ポ ン デ ン ス


* イチゴ[一粒売り]148円

   日本の果物消費量は先進国で最下位


 厳寒の季節二月、比較的温暖な東京でも朝夕はかなり冷え込む。  春夏秋冬の変化がはっきりしていて、それぞれに楽しめる日本では、熱い夏を過ご した実りの秋には、桃や梨をはじめ、ブドウ、柿などたくさんの“秋の味覚”が色と りどりに果物屋の店頭を賑わせてくれる。

しかし、各地に雪の便りが聞かれる頃になると、それらはすっかり陰を潜め、輸入 品やミカンなどの柑橘類やリンゴを除いては、途端にその種類も少なくなってくる。  だが、そうした中で元気に登場、消費者の目を引きつけているのが色も鮮やかな真 赤なイチゴだ。

従来イチゴは、陽春を象徴する果物だと思われてきたが、その他の野菜類と同様、 農業技術の改良と温室栽培の拡張によって、余り季節感無く出回るようになってきて いる。  バナナ、パイナップル、オレンジ、パパイヤ、マンゴーなど輸入果物の多い中で、 イチゴは国産フルーツの代表格でもある。

日本で生産される果物は、イチゴに限らず概して見た目にも大きく、立派な形をし ているものが多い。  しかし、それぞれの果物がもっている特有の酸味や、独特の香りなどが少なく、甘 さだけに重点が置かれているのが特徴とも言える。 イチゴももちろんその例に漏れな い。

そうした品種の改良に力を人れているのは、消費者のニーズがそこにあるから、と いうのだろうか。  と同時に、消費需要もそうした改良に比例して市場拡大しているのだろうか。  ところが、意外な事に日本人の果物の消費量は、先進国のなかでも最低だ、と言う 結果が出ているのだ。

国連の食料農業機構(FAO)の消費量統計によれば、日本人の一日一人当たりの果 物の消費量は150グラム弱で、欧米先進諸国には遠く及ばず、韓国、イラク、北朝鮮 などの諸国よりも少ないという結果が出ている。

この統計では、中米のベリーズ[メキシコの東南部、グアテマラの隣接国]=消費 量は約700グラム(日本の5倍弱)=を筆頭に、イスラエル、ギリシャ、イタリアな どの地中海沿岸部諸国、更にカナダ、ノルウエー、アメリカ、ドイツなど、北半球に 属する国がそれに続き、その後に、フィリピン、メキシコ、スペイン、ブラジルなど のフルーツ輸出国が並ぶ。

日本は、オーストラリア、フランス、イギリスなどよりも少なく、中国、ロシア、 パキスタンの諸国よりはやや多いという位置付けになっている。 


中部ヨーロッパ系のG記者は言う。 
先日、東京都内のある“デパチカ”(デパートの地下食品売り場)に行きました。  そこで、何と、イチゴの『一粒売り』を発見しました。  一粒が148円(約1.1ユーロ)でした。 驚きましたが本当です。  通常は店頭に山積みされて1キロ単位で売られているヨーロッパでは、品種はとも かく、その違いにショックを受けました。

そのイチゴは確かに、大きさはゴルフボールより大きめの、真赤な本物のイチゴで した。 品種は、甘い王様という意味らしく『あまおう』と表示されていました。  珍しく面白いので、私は早速本国にトピックスとして報告しました。  その同じ売り場には、12センチ×18センチほどの容器に入ったやや大粒のイチゴも ありました。

数えると12粒がキチンと奇麗に並んでいました。  その値段は800円(約6ユーロ)でした。  6ユーロならば、私の国では多分バケツが必要になるでしょう。  私は日頃、近くのスーパーでイチゴを買いますが、『デパチカ』と同様のパックに 並べられて入っています。

そのスーパーでは『デパチカ』よりやや安く、一パック約500円です。 日本のイチ ゴは一般的にやや大きいと思いますが、味はイチゴ独特の甘酸っぱさに欠けると思い ます。  それに表面の鮮やかな真赤な色に比べて、中身の白さが目立ちます。 ですから、全 体が何かいわゆる水っぽく感じるのです。

ヨーロッパでは、リンゴをそのまま食べるよりも、お菓子や料理などに加工して消 費する場合も多いのですが、そのまま生で食べた場合は、味も硬さも、日・欧ではか なり違います。  確かに日本のリンゴは軟らかく、甘いのですが料理には不向きです。

日本では他の多くの野菜類と同様、イチゴはビニール製のテントで覆われた温室の 中で栽培されるのだそうです。  ですから、気侯に関係なく栽培する事が出来るのだそうです。  そして、品種の改良も進み、より大きく、より甘い、新しい種類のイチゴを送り出 せば、採算性が良くなるのだと言います。  つまり農業の科学工業化です。

日本の友人に聞きますと、イチゴを含めて、果物は必ず大きさや糖度などを選別機 にかけてから出荷されるのだそうです。  そのための技術開発は世界一を誇るといっていました。  ちょっとにわかには信じられませんが、イチゴなども一個ずつロープに吊り下げて 運ばれ、自動的に大きさや甘さなどの検定を受けてから、容器に詰められるのだそう です。

もっとも、そうした選別機械は他の国での需要がどれだけあるのか、興味のあると ころですが・・・。  こうしたイチゴの例を見ても、あえて諸条件の違いを無視して単純にヨーロッパと の価格を比較したとして、余りにもその価格の違いに驚かざるを得ません。

これでは、見た目にも立派な果物が豊富にある筈の日本が、何故消費量では世界の 中で下位にランクされるのかが、少しわかるような気がします。  日頃ふんだんに果物を食べたいと思っていても、“世界一高い値段”に躊躇してし まうのではないでしょうか。

確かに日本の果物がみんな素晴らしく色も形も立派であることは異論がありません。  自然が生み育ててくれた果物とは思えません。  そのまま食べるのが惜しいような、どこかに飾っておきたいような見事な“作品” が多いのです。  でも、どうしてそんなに果物を宝物扱いにするのでしょうか。

聞くところによりますと、リンゴや梨のような果物は、樹木に結実した時から一つ 一つに紙袋でカバーをして、完熟するまで大切に育てると聞きました。  そういえば、表面に漢字で“祝”や“ハッピーニュ一イヤー”などの文字を浮き出 させたリンゴなどを見かける事があります。  面白いアイデアだとは思うんですが、ちょっと食べるには、ためらいますね。

それは例外だとは思いますが、見栄えを追求する余り、余計なコストをかけたり、 最終価格に直接影響する労働コストを少し見直してもいいのではないでしょうか。  もっと自然に逆らわずに、それぞれの果物本来の“味と香りと形”を追求して、さ らに広く消費者に提供するような仕組みを考え直すべきではないでしょうか  


トーマス・J・ナーサム