(平成17年3月2日)

東 京 コ レ ス ポ ン デ ン ス


* 「京都議定書」の発効を契機に
                 日本のサマータイム復活へ


   “ライフスタイル”の変化と省エネに期待される効果は?


 日本でも「サマータイム」を再び導入しようとする動きが出てきている。  自民、民主など超党派の国会議員で構成されている「サマータイム制度推進議員連盟」(代表・平沼赳夫前経済産業相)が、議員立法の準備を進め、早ければ今開かれている国会に法律案が提出される見通しだ、というのだ。

この制度は一日の日照時間が長くなる、春(四月)から秋(十月)までの“夏の間”だけ時計の針を一時間だけ進めて、社会全体の生活時間を繰り上げようというものである。

現在60歳以上の人ならば記憶があると思われるが、かつて日本がまだ連合軍の占領下に置かれていた1948年に、当時のGHQ(連合軍総司令部)の指示によって、この「サマータイム」が導入されたことがある。 しかし、長続きせず、わずか4年後の1952年には廃止されてしまった経緯がある。

それらの主な理由は、まず、そうした制度の導入自体に、日本人の多くが戸惑いと違和感を持って迎えたことである。 そして、農業や漁業を基本にした当時の日本社会には、そうした人為的な時間と自然の営みとをうまく適合させることが出来なかった事も原因の一つに挙げられる。

また、不慣れな時間のズレに生活のリズムを壊されるなど、国民の間に不評が多く、国の世論調査でも半数以上が反対、廃止を求める声によって、わずか四年間だけという“実験的な”結果で終わってしまったのである。

その後、1995年と1999年の二回にわたって、参議院で、この制度の導入に関する法案を、議員立法で提出しようと試みたこともあるが、各党間の意見調整がまとまらず、法案の提出までに至らなかった経緯もある。 その「サマータイム」をもう一度“復活”させようというのだ。

今回の法案によると、四月の第一日曜日から十月の最終日曜日までの約七カ月間をサマータイム期間として、一時間だけ時計の針を進めて社会全体の生活時間を繰り上げ、省エネと生活行動の変化による経済活動の活性化に期待しようというものである。

先に地球温暖化の防止を目的とした「京都議定書」(1997年の国連気候変動枠組み条約に基ずく『地球温暖化防止京都会議』で採択された合意文書。 内容は、先進国に二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出削減を義務付けるもので、国別削減量の外、国と国同志の排出量取り引き制度など、国際協調の仕組みも盛り込まれている。 日本以外の国別義務は、EU8%,米国7%などと定められている。 すでに世界の140ケ国が批准している)が発効したばかりの日本でもある。

サマータイムの導入によって得られるエネルギーの省力化効果は原油換算にして50万キロリットル相当という試算もある。 決して少なくない驚くべき数字である。 政府の長期エネルギー需給見通しでは、追加の省エネ量を460万キロリットルと見込んでいるから、今回の制度が導入されることによって、それを遙に上回る量の節約がその見通しに加算されて期待できることになる計算だ。

一方、日本ではまだ不慣れなこの制度によって起きるであろう日常生活への様々な影響や、労働条件の変化(悪化)などには、当面、関係機関が適宜、適切な対応と配慮をする必要があろう。


ヨーロッパ系のU記者は云う 
私たちがすでに慣れているサマータイムは、米、英はじめ、世界の約70カ国が導入しています。 先進国で実施していないのは日本ぐらいでしょう。 ようやく日本も(時制先進国の)仲間入りということになります。

元もと、欧米がサマータイムを導入したキッカケは、照明用電力消費の節約にその主目的があった、と言われています。 これまで日本でどうして採用されてこなかったのか、その理由がよくわかりませんが、もし実施されれば、日本の人たちのライフスタイルももっと変わってくると思います。

それは、ある春の日の朝、一時間早く起きる生活から始まります。 しかし、それは、昨日までと同じ生活時間になるわけです。  ですから、腕時計など家の中のすべての時計の針を一時間だけ進めなければなりません。 ちっと面倒かもわかりませんが、テレビ受像機、BVD、パーソナルコンピューター、携帯電話、デジタルカメラなど時計を内蔵している機器も例外ではありません。

いわば、その日から一時間の時差のある国に住むことになった、と考えればよいのです。 その結果、企業などに勤める人は、夕方、といってもまだ明るいうちに、帰宅することになります。 これまではなかったと思える時間が、そこに出現するのです。 しかし、だからといって一日の時間が増える訳ではありません。

ただ、アフターファイブの戸外の明るさが、日常の生活時間行動に、さまざまな変化を誘発するチャンスを与えてくれるのです。 日本の家庭では、親子の対話も家族との団欒も少ない、と言われています。 家族が揃って夕食のテーブルを囲みながら、その日の出来事を話し合う事も、今では珍しいのだそうです。 そこに変化が現れるかもわかりません。

なぜか、有能なビジネスマンほど帰宅が遅い、と言われます。 有能なら、所定の時間内に定められた業務が完遂できるはずです。 残業に対する概念も、少し変わってくるかもわかりません。

また、信頼と友好を深めるためにと、彼らは取引先や同僚と酒場で酒を飲むことが日常化しているようです。 それらは日本固有の文化だ、と言われれば、返す言葉もありませんが、少なくともサマータイムによって生まれる『健康的で明るい時間』を、より有効に活用できるのではないかと思います。

すでに科学技術立国として、経済大国の地位を確立している日本です。 人工時間によって“自然”を最大限に活用し、日本人の生活行動をどう変えていくかは今後の大きな課題です。

一年に二回、時計の針を進めたり戻したりするのは面倒だ、と言う意見もあるようですが、地球環境に与える負荷の軽減や、生活の拡大、変化に伴う経済波及効果等から見れば、サマータイムの効果は大きいものがあると思います。 もっとも、二酸化炭素などの温室効果ガスの最大排出国の米国や、排出量が世界第二位の中国が『京都議定書』から離脱したままだ、と言うのは、まだ国際的課題を残していますが・・  

 
* 「たばこ規制枠組み条約」が発効

   禁煙強化の法制は世界的な傾向 日本の愛煙家は今後、どうする?


 喫煙による健康被害を防ぐための「たばこ規制枠組み条約」が発効した。 これは去る2003年5月に192の国や地域が参加して開かれたWHO(世界保健機関)の総会で、全会一致で採択された国際条約である。

広告の原則禁止や包装の30%以上を警告表示に当てる事などが盛り込まれている。 この条約はこれまでに世界の主要国57ケ国が批准している。 批准国の日本としては、すでに日本政府(財務省)は、昨年の秋に、電車やバスなどの公共の乗物へのたばこの車両広告を禁止しており、今年の四月からは、ビルの屋上や繁華街などへの看板の新設も禁止される。 そして既存の看板も九月までには撤去が義務付けられる。

今後はタバコ屋の店頭や自動販売機、雑誌広告など、極く一部を除いて、街の中からはタバコの看板や広告が殆ど消えて無くなる事になる。 また、タバコの箱の警告表示も、これまでの「健康を損なう恐れがありますので、吸いすぎに注意しましょう」という、比較的穏やかなものから「喫煙はあなたにとって肺ガンの原因の一つとなります」と強く改められる。

さらに、日本全国に約62万6,000台設置されている(世界でも例がないほど多い)たばこの自動販売機の全てに、成人を署名するICカードがなければ買えない仕組みを導入して、未成年者の喫煙を防ごうともしている。 この条約では、たばこの消費を減らすための効果的な対策として、広告規制や警告表示とは別に、価格の引き上げ措置も掲げている。

一般の消費者物価が比較的高い日本だ、と言われるのに比べて、どういうわけか、たばこの値段だけは安い。 たばこだけが、欧米先進国のほうが通常、日本の2、3倍も高いのが一般的だ。 だから、実質的には日本のたばこは、相当安いと言うことになるだろう。

WHOの調査によると、タバコ1箱の価格とその国の労働対価の比は、イギリスが40分間の労働賃金、ノルウエー38分、フランス20分、米国での18分がそれに匹敵する、というのに対して、日本は僅か9分の賃金で一箱が買えるという結果が出されている。 がしかし、現在のところ、日本では値段の引き上げ議論は、あまり積極的に行なわれていないようだ。 


ヨーロッパ系のW記者は言う。
健康被害に対する日本の警告表示は、まだまだ優し過ぎます。 EU(欧州連合)の各国では、ガンに冒された肺や、真っ黒になった歯ぐきなど、42種類のカラー写真とともに、『タバコは人殺しだ』『喫煙によって死を早める』等の警告文を添えて、箱の下半分に印刷・掲載するように義務付けられています。

EUだけでなく、南アジアのシンガポールでも、私は昨年の暮れに出張した際に“発見”しましたが、たばこの箱に表示された警告のカラー写真はすさまじいものでした。 ガンに冒された肺をはじめ、出血する脳、ボロボロになった歯ぐき、重体の新生児などとともに『ゆっくりと苦痛に満ちた死を迎える』や『受動喫煙に苦しむあなたの家族』等という警告文が添えてありました。

また、ちょうど一年前にアイルランドでは、パブやレストランをはじめ、職場など屋内での喫煙を一切禁止する、罰則付きの法律が施行されました。それはヨーロッパでは初めての全面歴史的禁煙法でした。 国内に約7千軒もあるパブやレストランでは、火を付けただけで犯罪行為と見なされ、経営者とともに最高3,000ユーロ(約40万円)の罰金ですから、愛煙家の旅行者はくれぐれも要注意です。

さらに、北欧のノルウエーでもすべてのバーやレストランだけでなく、空港等全国的に公共の場所での喫煙は非合法化されています。 ヨーロッパでも比較的喫煙率が高いとされている南ヨーロッパのイタリアでは、レストラン等での、喫煙者と嫌煙者とを区別する『分煙法』が施行されています。 これに違反した『客』には最高で275ユーロ(約37,000円)の罰金が課せられ、経営者には2,200ユーロ(約30万円)の罰金や営業停止処分が待ち受けていることになります。

友人から聞いた話ですが、中央アジアのヒマラヤに連なる神秘の国、ブータンでは、昨年末からたばこの販売を一切禁止、国内で事実上の全面禁煙が実施されたそうです。 これは世界でも初めてのことです。 もし、違反した場合には罰金が現地貨幣の1万ヌルタム(約2万3千円)を支払わされると言います。 旅行者も例外ではないそうです。

また、世界的にも高級葉巻で知られるキューバが、学校や病院等の公共施設に加えて、バスやタクシーなどの交通機関も含めて、全面的に禁煙措置に踏み切ったと報道されています。 自動販売機は全て撤去、学校等の教育機関の周辺百メートル以内での煙草の販売も一切禁止、という徹底ぶりだといいます。 それも、愛煙家だったカストロ国家評議会議長が、彼自身の健康保持のために禁煙に踏み切ったことに端を発して、禁煙の流れが一挙に国内に広がったというのは、お国柄でしょうか。

一方、一挙に30%もの値上げを行なって、禁煙率を高めようとしたフランスでは、この一年間でたばこの販売量が2割も減ったと、発表しました。 フランスでは、一箱20本入りの紙巻きたばこが、平均で5ユーロ(約675円)ですから、EU圏内では、英国、アイルランドに次ぐ高価格となっています。

しかし、日本とは違って、EU圏内では地続きの隣接国ドイツでのたばこの値段は、まだフランスよりも3割も安く、スペインの場合は半額程度ですから、値上げに関しては、周辺国との調整も必要だと言う声もあります。

日本の、全国の成人男女に占める喫煙者の割合は、30%を割って、29.4%になった、と発表されていますが、男女別に見ますと、男性が46.9%、女性が13.2%となっています。しかし、日本に住んでいる実感からは、決して少ないとは思えません。 街の中での喫煙マナーも、レストランなどでの禁煙、分煙処置ももう少し徹底してもらいたいものです。 特に若い女性の喫煙態度は禁煙場所等お構いなしです。歩きたばこや火のついたままの吸殻を路上に捨てるなど、目に余るものがあります。

たばこの消費量の減少に伴って、JT(日本たばこ)が全国にある18の生産工場のうち、8工場を閉鎖する計画で希望退職者を募ったところ、全社員の約三分の一に当たる5,796人が応じたと報じられ、従業員の意識にも変化が現れてきているようです。 この条約の発効によって、今後ますます喫煙者に対する締め付けをはじめ、たばこをとり巻く環境が厳しさを強めると思います。 でも、これは世界的な流れで止まることはないでしょう  


トーマス・J・ナーサム